さつまろぐ

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末梢性顔面神経麻痺 体験記

2021年12月26日、末梢性顔面神経麻痺が発症。 顔面の左半分がほぼ動かなくなった。 その時のことを思い出しながらメモ。

発症

それは突然やってきた。

最初の違和感は左目。

22:00頃、リビングでくつろいでいると、なにやら左目が痒い。目が痒くなることは特に珍しいことではないので、しばらくすれば治まるだろうと考えていた。

24:00頃、寝る前の歯磨き。口をゆすいで、水を吹き出そうとすると、水が左側から漏れる。ここで初めて「あれ?」と感じる。何度やっても漏れる。次第に「あれ?」は「まずい」「やばい」に変わっていった。 急いで近くにいた妻に報告。落ち着いて顔を動かしてみると、やはり左半分の動きが悪いことがわかる。 まず頭に浮かんだのは脳梗塞。近しい人が脳梗塞になった事例を見ていたので、「まさか自分も」という考えが浮かぶ。

今はまだ意識がはっきりしているが、本格的に発症すれば自分で連絡を取ることもできないだろう、と思い妻と実家の連絡先を身に着けることにした。 しかし、まだ脳梗塞なのかは分からない。明日朝一で病院に行くとして、もう少し様子を見よう、ということに。少しでも言動がおかしくなったら、すぐに救急車を呼ぶように妻にはお願いした。 その日は不安を抱えたまま就寝。

これが発症日の行動。結果的には大事にはならなかったが、今思えば顔がうまく動かなくなった時点で119番すべきだったと思う。本当に脳梗塞だったら手遅れになっていただろう。

次の日

とりあえず生きている。そして意識もはっきりしている。言葉も出る。左顔面の異常はより顕著になったが、それ以外の箇所の異常は無い。

会社へは午前半休の連絡。詳細は後で説明する、と言っておいた。

病院といっても何科に行けばいい? 脳梗塞(と思っている)なら脳だろう、そして幸い自転車で行ける距離に脳神経外科がある、ということで朝一で受診。 受付の人に症状を説明。こちらとしては、いかにヤバい状況かを説いたつもりだったが、受付の人はいたって冷静。さもよくあることみたいな対応で、こちらとの温度差を感じる。

医師に見てもらったが、「あーはいはい」と言った感じで特に珍しくも無い様子。CTを撮ってもらって、再度診察。

  • 「いー」ってして。→ 左が出来ない。
  • 額にシワ寄せて。→ 左にシワが作れない。
  • 目を強く閉じて。→ 左目が閉じてるんだか閉じてないんだかよく分からない。

診断の結果、末梢性顔面神経麻痺、とのこと。脳梗塞で無くて一安心? 以下のような説明。

  • 脳から出ている神経が、何らかのウイルスの影響で炎症、肥大。神経を圧迫して起こる。
  • CTの結果、脳梗塞の兆候は見られない。
  • しばらく薬で治療。治るまで2,3ヶ月程度。
  • 5%ほどで後遺症が残る。
  • 口笛とウインクの練習をしましょう。
  • 風呂でよくマッサージをしましょう。
  • 冷水で顔を洗うのは避けましょう。

後で調べたが、ネットでよく出てくる「ベル麻痺」や「ラムゼイ・ハント症候群」などの単語は、医師の口からは出てこなかった。

帰り際、受付の人に、こんなのよくあることなのか、と尋ねたところ、老若男女来るとこのとだったので、そんなに珍しいものでもないのかな。

面倒なことになったが治るものでもあるし、脳梗塞でなかっただけラッキー、と自分に言い聞かせながら帰宅。

会社へは午後から出勤。

体の変化

改めて観察してみる。以下左側のみ。

  • 「いー」ができない。
  • 口笛の口ができない。
  • 上唇の感覚がない。ゴムがくっついているような感覚。
  • 鼻の穴が動かない。
  • 鼻の穴が小さくなった。
  • 頬が上がらない。
  • 目が完全に閉じない。閉じているか開いているかも分からない。
  • 上瞼、特に目尻側の感覚が鈍い。
  • 額にシワを作れない。

左顔面以外は全く変化無し。通常と全く変わらない。 しかし顔は動かない。どんなに気合いで動かそうとしても全く動かない。昨日までは普通に動いていたのに。

人間の体ってのは良くできた装置なんだな、と実感。そう思うと、歩く、手を伸ばして物をつかむ、キーボードを打つ、 といった何気ない動作がとてもありがたいことなのだと分かった。

生活・仕事への影響

幸い?新型コロナウィルスの影響でマスク生活が続いていたので、顔が動かないのは全く目立たなかった。帽子とメガネをかけると、もはやこちらから報告しなければ分からないレベル。 目立つ変化としては、

  • 「ぱぴぷぺぽ」が上手く言えず、「ふぁふぃふぅふぇふぉ」になる。
  • 食事が口からこぼれるので、口の左側を手で支えないといけない。
  • 左目が乾いて痛いので眼帯で強制的に閉じる。結果右目が疲れる。

といった事があったが、大きく困ることはなかった。 また仕事の方も、ほぼデスクワークだったため大きな影響はなかった。電話を取るのを若干躊躇する、眼帯をしていると心配がられる、くらいか。

一方、家族からは脳梗塞を不安視する声が強かったため、別の大きな病院でMRIを撮ってもらい再度検査。 ここでも脳梗塞の兆候は見られないとの結果で一安心。

その後の経過

最初の病院の受診後から投薬による治療を続け、約2週間が経過した頃、わずかに左下唇が動くようになってきた。 この調子とばかりに、顔の筋トレを開始。1か月もする頃には、見てわかるくらいには動くようになってきた。

発症から約1ヵ月、3回目の受診で経過を報告した結果、今回出す薬で治療は終了宣言。まだ完全には治っていないので、思ったより早かった。

その後、順調に顔は動くようになっていったが、一つ大きな気になる点が生じた。

顔の動かし方が以前と違う

麻痺が治るにつれ、左側の筋肉の使い方がかなり異なるようになってしまった。 麻痺が生じなかった右側を以前の状態とすると、左側の方が力が強く入るようになり、 唇を左右に動かす、頬を上げる、目を強く閉じる、といった動作が左右で力の入り具合が異なり気持ち悪い。 特に、あくびをした際に左目だけ閉じるようになってしまったため、意識して右目を強く閉じるよう調整する日々が続いた。

その他、回復中に生じた現象として、唇と顎の間、顔の中心付近で筋肉がピクピク痙攣することがしばしば。 動く右側と動かない左側で、何かがせめぎ合っていたのだろうか。 同様に、左上瞼の目尻付近でも小さな痙攣が何度も生じた。

半年も過ぎる頃になると、見た目には完治したように見えたが、左右の違和感はまだ残っていた。 妻に左右の違和感を話すと、「えー、もう完治してると思っていた」との反応。 麻痺自体は完治はしていたのだと思う。左右の違和感・筋肉の使い方が変わってしまったのは、 顔面筋トレで左右の筋力のバランスが崩れたことによるものと推測。

現在

本記事執筆時点で、発症から約14か月が経過している。 左右の違和感は、ゼロではないがだいぶ薄れてきている。要は、慣れた、ということだと思う。 一方、上左唇と上瞼目尻付近の感覚は、現在でも若干鈍く感じる。これが後遺症だろうか。 ということで、生活には全く支障はないが、まだ完全には終わっていない、という印象。

以上が私の末梢性顔面神経麻痺の体験記(継続中?)。 現在罹患中で不安を抱えている方の何かの参考になれば幸い。

反省点:119番はお早めに。記録の写真や動画を残しておけばよかった。

その他

2022年9月、歌手のジャスティン・ビーバーさんが「ラムゼイハント症候群」に罹患したとの発表。 私が罹患したものと同じかは分からないが、顔半分が動かなくなる症状は同じ。 公開されているインスタグラムの映像をみると、「あーそうそう、そんな感じ」と勝手に親近感を抱いていた。

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